スタンプ(Stamp)

”「スタンプ(Stamp)」”

Amigoの競りゲー。1992年とちょっと古いゲームですが、競り下げ系としてはかなりのオモシロが。
切手を買い集めては売りさばいて差益で儲けながら、真の目的である「消印チップ」を集めることが目的。設定からして切手コレクター魂が爆発。
場にはヘンテコな切手を発売する三つの小国。モナコリヒテンシュタインアンドラ。どれも実際に存在する国々です。ゲームに登場する切手は完全オリジナルなので実在しません。最初に各自2枚ずつ持ってます。それと幾ばくかの資金と。


手番にはオークショナーになって、場に出てきた2枚のレア切手のうち一枚を選び、全員参加で競り開始。この競りは前述の通り「競り下げ」です。どうするかといいますと。
オークショナーは「12」から声高らかにカウントしていきます。「12...11...10...」ってな感じで下へ下へと。で、誰かがこの値段でオッケーだと思ったら、テーブルの真ん中に設置されたオークションベルを「チーン」と鳴らして、落札おめでとうございます、という具合。早い者勝ちなんですねえ。
落札したら、支払いの半分は各カードに書かれた「切手の発行国」へ。国ごとにお金が貯まる仕組み。残り半分はオークショナーへ。貴重な収入源。もちろん、オークショナーが競り落としたら、全額「発行国」行き。そんな上手い話はありません。


さて。肝心の切手の売り方。
競りが終わるごとに、オークショナー始まりの時計周りで、「切手売る? どうする?」みたいな確認フェイズが発生します。ちなみに、切手を買うときはバラですが、売るときは3枚1組のセット売りのみ。やっかいな話。
各国とも「この組み合わせで買い取ります」というのを3パターン持っていて、それを満たすことが条件。組み合わせの系統は大きく3種類。「同色ジャンル違い」「同ジャンル色違い」「ジャンルも色もバラバラ」。で、なんとか切手を売れたら、その国が貯め込んだお金を根こそぎいただけるという仕組み。
また、各切手カードには、ある特定の国と「相性がイイ/ワルイ」というのがあって、相性のイイ国に切手を売った場合、その切手一枚ごとに幻の消印一つゲットできると。これを規定枚数集めると勝ち。だもんで一番重要。


ここで押さえておきたいのが、カードっていうか切手の種類の話。いやむしろ一番最初に触れるべきだったのかもしれませんが。
切手カードはコンポーネントの大半を占めるもので、このゲームの一番の魅力。その数45枚。ジャンルは3種類。「スポーツ絡み」「動物絡み」「国やらのイベント絡み」。それがさらに3色に分類されてまして。カードがどのジャンルどの色に属するかはカード隅にシンボル化されているのでプレイアビリティは落ちてません。
ちなみに、全てのカードにそのジャンルに沿った切手イラストが描かれてるんですが。これが、同じイラストが一枚もないという凝りよう。描きわけられてます。イカス。しかも、どの切手でも箱絵の謎の生物が活躍していまして。ボドゲコレクター魂まで燃え上がりますねえ。スバラシイ。
ということで、カード情報として管理されているのは「発行国」「色、ジャンル」「どの国に売ったら消印をもらえるか」「多彩なイラスト」ということになりますね。


話戻って、オモシロいのがゲーム中の借金。3枚一組でしか売れないため、どうしても資金不足になりがち。すると借金できるのですが、このゲーム、消印を規定枚数集めても、先に全ての借金を返済しないことにはアガリを宣言できません。なんていうんですかね、金がないのに趣味につぎ込むのはサモシイみたいな感じなんでしょうか。
ちなみにこの借金、かなりの高利なんですが、消印1枚で代用して返すこともできます。集めるのは消印なので、なにやら本末転倒な気もしますが、1歩下がって3歩も4歩も前に出ることができるのも、このゲームの醍醐味。損して得とれ、みたいな。


とまあ、大体こんな感じ。っていうかほぼ全貌。


全体として。
なんというか、全編通して不思議な競り感。ルール聞くのと遊ぶのとは結構印象が異なります。上手く言えないので困った話なんですが。
カウントダウンする「リアルタイムな競り」なので、テンポが悪くなりにくいです。でプレイヤーには迅速な決断力が問われると。カウントを始める前に少しインターバルを与えると気楽ですが、競りが盛り下がるので「考える間を与えない」方向で。
とにかく気持ちを急かして、「いいのか、いいのか、いや買ってしまえー」的なあわてんぼうな買い物を主として。これがまた楽しかったりするんです。全員が同じような心境なので、「これを欲しがっているのは自分だけだろう」と安心していたら、思わぬところから手が伸びてきたり。動機はというと、邪魔も確かにあるものの「手が広がるからいいかも」くらいの軽い気持ちだったりして。これまでのカード購入の傾向だけでは読みきれない「折角だし買ってみるか」のゆらぎがオモシロ。なんとかなりそうな気がしてしまうんですねえ。どれもが。で、お金が減っていくと。
もちろん計画的に買い進めることは大前提としてあります。しかし、なんでもかんでも計画的ではオモシロくなくなるのでは、というのが私の主張。「そろそろベル鳴らしたいから買ってみる」でもいいと思うんです。もともとパーティゲーとしてデザインされてる風ですしね。
このゲームは、言ってしまえば「浅はかさ」が売りでありオモシロの本質なので、慎重にゲームを進行させていくと魅力が半減します。思惑や想像を超えた衝動的な競りがイイわけで。終盤には一撃必殺での勝利を目指して場が若干膠着することもありますが、安くなるという「競り下げ」の方式が必ず状況を好転、場を動かしてくれるので安心です。
そう考えると5人くらいがベストかと。最低でも4人ほしいところ。少し変わった競りゲーですが、「競り」って、これくらいのおバカさや軽薄さや賑やかさがあって、うっかり楽しめるものだったんだねえ、なんて思いふける楽しさがあります。「らしい」オモシロ。
こういうの好き。