バンクファタール(Banque Fatale)

”「バンクファタール(Banque Fatale)」”

マイナーボドゲメーカーBLATZのゲーム。作者はドーラさん。私が本作を初めて遊んだ時は、「ドーラって人は本当にスゲーよ・・・・」とシミジミ思ったものです。地味ゲー、でもかなりオモシロ。イカしたシステムの憎いヤツ。


さて。


次々に出てくるカルタファタールという名の株券(みたいなの)。これをチップを握り込んで買い漁り、価値が高くなってから売るか、もしくは配当で儲けていくかという競り&株ゲー。本来は「金持ちたちが興じた、禁じられたカジノ遊び」という設定らしいですが、まあそれはともかく。
握り込むチップは全て、カルタファタールの色と対応するように色分けされていて、握りこんだ数だけでなくその色自体も、相場を左右する要素となっています。
全員が握りこんだチップを明らかにして、まずは各自純粋に枚数を比べ、今回競られたカルタファタールが誰の手元に行くかを確定。その後、チップの枚数を色ごとに確認、一番多い色は相場があがり、一枚もない色は即暴落、などというキレ味鋭い処理が。
それゆえ、既に所有するカルタファタールの価値を維持するためには、その色のチップがある一定数、常に競りの場に出てこないといけないのです。スゲー。
ちなみに、一人で特定の一色の価値を上げたり維持したりするのは非常に厳しく、相乗りが重要になってきます。少なくとも「自分が売り抜けるまで」は共同戦線を張る必要があると。
こうした、競りが単なる競りに終わらず「相場の変動」と「カードの購入」の二役を賄うというのがとても衝撃的。なんとシステマティックで無駄がないのかと。
また、消費したチップを補充する際にも特有のオモシロがあり、選択的に流通量を操作していくことで相場へのテコ入れが可能になっています。補充すらも戦略的なんですねえ。イカス。


んー。


微妙に断片的で要領を得ない説明なので、いまいちピンときにくいと思いますが、実際に一連の流れを体験すると、「うわ、なんだこの洗練はっ・・・!!!」と、愕然とするはずです。思わずため息が出るほどにシンプルに美しく纏め上げられたその構造は、業物の刀のように魅惑的な光を放っていると思うわけですよ。いやもう、本当にスゴイんですって。
非常にマイナーですが、なにかにつけてジワリと滲み出る妙味みたいなのがあってイケてます。「ほぼ正確にゲーム終了時間が読める」というのも、この乱れのないシステムがあればこそ。システムの美しさに感激できる方は是非一度。「奥深い」というよりも、「奥ゆかしい」と言いたくなる、そんなゲームです。ワビサビ。