グラシアス(Gracias)

”「グラシアス(Gracias)」”

礼儀正しいカード収集ゲー。オモシロ。なのに、私の周囲では微妙に不評。なぜでしょうか。
カードはたしか6色。枚数はたくさん。ゲームはラウンド制で、4ラウンドを1セットとして計3セット。短時間ゲー。
場に3枚組みのカードを人数分準備します。構成は表向き2枚、裏向き1枚の計三枚。ずらして見えるように。
で、ラウンドのスターターから、どれか一組を受けとって、裏向きは裏向きのまま自分の手元に。残りの表向き2枚のうち1枚は自分の手元に、もう1枚は誰かにあげます。で、もらった人はどんなカードでも「グラシアス(ありがとう)」と言って受け取って、手元に並べると。
これを全員が行ったら、ラウンド終了。また山札からの準備云々と繰り返し、4ラウンドして集めた枚数で決算して、それを3セット、総得点を争うというもの。


何がオモシロかというとその得点方法。
基本的にはカードの色に関係なく、集めたカード1枚1点。簡単。
しかし、決算時に色別に最多を集めてしまった人はその色のカードを全て破棄しないといけない。なので、最多にならないように、でもギリギリまで多く集める、が目標になります。
受け取ったカードは表向き、だったら、最多を避けるのは簡単、こっちから押し付けてやればいいだけ、とならないのが、このゲームのスゴイところ。
カード分配時に受け取っていた裏向き。これが不確定要素として機能します。決算時には表向きとなり、集めた札に加えられるのです。
しかも。決算時に5枚以上になっている色があると、それらは5枚一組1点として先に取り除かれます。最多の判断の際にはこの5枚は加味しません。結果として、この色は安全圏だと思っていたのに、最多に急浮上、なんてことはこのゲームでは良くある話。
さらに。最多破棄の判定は同数タイなら両成敗なので、安心を得るためには、「他者より確実に1枚少ない」という状況が必要になるのです。
裏向きカードによるゆらぎと、この決算時処理のアレコレがとにかく秀逸。これを考えちゃったムーン先生は偉大だと思う次第。
裏向きのカードはいわば運要素ですから、これによってキツキツになりそうな基本構造を和らげています。目に見えている部分だけを追えば、最多の回避は容易ですが、この謎の「裏向き」が「5枚確定してるのでは」との不信感を巻き起こし、新たな心理戦が発生するに至っているのです。


ちょっとわかりにくいかもしれないので、一例。
たとえば。見えている情報だけで判断すると自分が青2枚で現在2着、相手が青4枚で現在1着だとします。しかし相手が裏向きカードで青をもう2枚持っていたら。決算時には相手は青6枚。5枚は取り除かれて、まずは1点。残り1枚。この時点で最多は自分の2枚になりますから、即座に破棄。相手は残り1枚でさらにもう1点をいただけてしまうという。
なんとも狐につままれたような話ですが、これが現実。安心してたら相手が2点で、自分は0点。見事に立場が逆転しちゃってます。
自分の2番手確定(安全圏)を追うばかりに、相手にカードを送ってばかりいると、こうした逆転現象が起こるかもしれないのです。相手が自分で現状最多のカードを集め始めたら危険信号。・・・・・っていうか、そうなった時は9割がた手遅れなんですけどね。

考えてみれば、5枚一組は確実な1点に繋がるので、そう悪くも無い感じ。同数タイの両成敗もありますから、事実上、各色の得点限界は3点。自身の手の広がりと、相手を陥れることを含めて相対的な価値を考えれば、断然アリな選択肢です。よく出来てますねえ。



とはいえ。こんな戦略的な話をしていても、なにぶん裏向けカードも、場に出てくる表向きカードも全てランダムですから、流れ次第ではどうにもならない局面も多々。しかしそれはまあ軽いカドゲだと割り切って、遊ぶのが吉な感じ。
めくられた裏向きカードを見て「うわ、マイッタ」「ゲンナリ」とか一喜一憂するくらいで丁度いい按配。なにより常に挨拶を欠かさないその姿勢が礼儀正しくてイカス。ルールでそれを規定してくれて、本当に良かったです。
思惑と推測と勝手な決め打ちで進む、なんともいえない妙な味わい。しかし意味無くゲーマー的思考を展開可能なあたり、私の好きな「ゲシェンク」や「ミッキー&5リンクス」に通じるものがあるような気もします。・・・・・いや、ちょっと言い過ぎました、気のせいです。でもオモシロには分類。なのに、不評。なぜでしょうか。謎。