神が降臨する儀式系のアレ。

”「ドルメンの神々(Die Dolmengotter)」”

エガートシュピーレっていう微妙にマイナーなとこから発売されちゃったオモシロゲー。30分くらいでサクーっと終わるのに、プレイ後の満ち足りた気持ちったらもう。
ボードも地味、箱も地味、システムも地味と、なにかにつけて地味まみれな本作ですが、騙されたと思って一度遊ぶが吉。マルチなアブ系ボドゲとして、こりゃあ侮れないオモシロですよ。秀作の予感・・・・。


さて。


早速、ゲーム内容の話。
古代宗教なドルイドたち(神官みたいな役割)が、ドルメンを作ってミラクルパワーを授かろうとかするゲーム。ドルメンってのはテーブルみたいなカタチに組まれた石造物らしいですよ。ストーンサークルとかそういう流れなんですかね。まあ設定はよくわからなくてもいいです。もともとそんなに雰囲気ある作りでもないですし(身も蓋もない)。
ルール量もそう多くないシンプルなシステムなんですが、これが言葉で説明するとよくわかりにくい。実際に見ながら話すと簡単なんですけどね。個別に画像を準備しようと思いましたがやめました。気合で読み解いていただきたい次第。


ボードには四角・六角・八角形のドルメン建設予定広場がむじゃらと描かれてまして。リンク画像でいうところの緑の部分がそれです。広場のそれぞれの「角」には丸いスペース。広場はどれも密接していて、辺と角が相互に兼ねるようになってます。
プレイヤーには多数の石駒(小さな八角柱)。これをさっきの丸いスペース(=石置き場)に配置します。これとは別にドルメンを表す駒複数(大きな直方体)。外見には差がないですが、面に1〜4の異なる価値が書かれてます。これは決算時に効果を発揮。あとは3つのドルイド駒。カルカソンヌのミープル型です。ボード上をウロウロさせることで、卵でも産むようにさっきの石駒を置いていくことができます。


で、何するかっていうと、陣取りそして多数派争いです。


最初はドルイド降臨フェイズ。順番にドルイド駒を盤上に配置しきったらゲーム本筋開始。自分の3つの駒のいずれかをラインに沿うように「一歩」移動。移動すると、「移動元の石置き場」に自分の石を置きます。動くまでは置けないってこと。この配置はほぼ強制で、どうしても置きたくねーんだYO!って時には勝利点を消費しないといけません。もちろんゲーム開始当初でもその選択が出来るように、最初からお小遣い的に勝利点を持ってます。
石を置くうちに、ある広場に対して多数派になったら、自分の手元からドルメンを選び、その広場に置く事ができます。価値は他人に見えないように下向けに。


えー、ここからです。ここから分かりにくくなるので、じっくり。


この多数派って考え方がオモシロくて、比較相手になる他人の石駒がなければ、自分がその広場にいくつ石駒を置こうが、ドルメン配置のイベントが起こりません。必ず、「他人と絡まないといけない」のです。しかし「1vs1」ではどちらが多数とも言えないので、多数派の判定が発生するのは最低でも「2vs1」から。「3vs1」や「4vs1」でも一緒。とにかく最低でも2色は必要ってことです。・・・・ここまで大丈夫ですかね。
で。この「ドルメンの配置」にはさらにもう一癖あるというか、複数の段階がありましてね。
さっきの例でいうところの「2vs1」を「2vs2」にしたら、多数派に「追いついた」として「イコライザー」という新たなドルメン配置の権利が発生します。ただ、ドルメンを配置する際には、既に配置してあるドルメンの「下に」滑り込ませることになります。これ重要。何が?って感じですが、とにかく後述。
また、イコライザーな「2vs2」という状況を「3vs2」とか「2vs3」にしたら、再び多数派に「返り咲いた」として「アゲイン」というドルメン配置の権利を得ます。こっちの場合はさっきとは逆に、既に配置されているドルメンの「上に」重ねることができます。
このイコライザーだのアゲインだのは、広場を囲む石置き場に石を置ける限り何度でも発生しますし、これが一広場に対して3人のプレイヤー間の話であっても同様の処理を行うんですよね。イコライザーとか特に。
で、この「ドルメンの重ね置き」は、これら多数派処理によって、八角形の広場なら最大で6枚、六角形なら4枚、四角形なら2枚、積み重なる可能性があります。実際に動かしてみると確かにそうなるので、本当かよ!と思った方はお試しあれ。
とかなんとかやりながら、ある広場において、全ての石置き場に石が置かれたら即座に決算が発生。
「ドルメンの高さ」と「広場の大きさ」に応じて算出される(大袈裟)規定の倍率に、使われたドルメン駒の価値とを掛け合わせたものが獲得勝利点になりまして。
規定の倍率ってのは一番上が最高倍率で、下になるほど倍率が下がっていく感じ。だもんで、たとえ一個しかドルメンがなかったとしても、「一番上にある」ことには変わりないので最高倍率ってこと。
あー、もちろん、各プレイヤーには自分が貢献した(配置した)ドルメンの分だけしか得点は入りませんからね。ドルメンごとにプレイヤーを確認して、伏せられたドルメンの価値を見て、それに高さの倍率を掛けて、得点を入れていくと。
こう聞くと計算が手間そうな感じですが、倍率は降順だし、数も多くないしで簡単です。3x2とか4x5とか。九九が4の段まで言えて、繰り上がりの足し算が出来れば遊べます。って、こんな言い方は要りませんか。そうですか。
こういうのを繰り返していって、誰かのドルメン使いきりか、全員の手詰まりでゲーム終了。
石が足りず未完成だった広場も、ドルメンさえあればとにかく決算して、一番勝利点が多かったら勝ち。目標は明快。



ってな感じで結構詳しく説明してみましたが。
この多数派処理とドルメンの配置、そして得点計算方法がこのゲームの全貌といっても過言ではないくらいキモになってるオモシロシステムです。もう既に長いので細かな事例を挙げていくのはやめますが、システムだけ聞いてもオモシロな片鱗が伝わると思うんですが。・・・伝わりませんかね。
あとはまあ、ドルイド義経の八艘飛びよろしく、立ち並ぶ他ドルイドたちの頭上をミラクル跳躍したり、謎のハーブパワーでおもむろに空を飛んだりと、駒の移動にも一癖あるんですが、詳しくは略。
それから、マップがコンシューマゲー的にループしてたりするってのもありましたね。おかげで「端に追いやられる」ということがないです。マップ端を明確に定義するゲームがほとんどなので、こうした概念は目新しく感じます。よほど無理しない限りは、基本的に「石を産みながら歩く」ことになるので、より絡み合いを多くするための配慮なんでしょうなあ。
もうね、とにかくこのゲーム、ちょこっと歩いただけで次々と多数派の判定が起こりますからね。こうした移動のアヤがオモシロシステムをさらなる彩りを与えているのは間違いないところ。ボード上の詰まり具合がグッとくる悩ましさですよ。最初はこれだけボードが広いのに石駒これだけで大丈夫かいな?とか思うんですが、いやいやどうして、実に適切な量であることに気付かされます。むしろ使いきれるのかって感じ。
受動的な多数派判定とかも悩ましいですね。「3vs0」みたいな広場があったとして、そこに迂闊に立ち入ると3のプレイヤーが多数派になってしまいますからねえ。広場は辺と角を兼ねた配置なので、これを置くとこっちの広場は自分の多数派になるけど、隣の広場で他人の多数派判定が発生してしまうー、みたいなジレンマ。損得勘定が大切。



勝敗のカギとしては、「出来るだけ多くの決算に絡んでおくこと」のようです。
価値の異なるドルメンの使い時というのは、もちろん考えなければならない重要な要素なんですが、よほどのことでも無い限りは「自分の広場」みたいなのを作れるので、高価値のドルメンほど最大効率で使えてしまいがちです。
じゃあ、何で差をつけられるのかっていうと、ドルメンの価値と数はプレイヤー共通なので、最後はもう「決算されるドルメンの個数」次第。イコライザーでもアゲインでもいいので多数派判定に絡んでドルメンを消費していくということ、そのための無駄の少ない移動を重視していくことになります。
ゲーム自体が短いので、多数派判定も起こらないような広場に石駒を数回無駄置きすると、得点争いからはわりかし遅れをとってしまう感じ。布石という考え方もありますが、相手もこちらの利になることは極力避けてきますからねえ。今どこがホットかというのを見極めて、波にのっていくような立ち回り方が求められる模様。
今回は2度ほど遊びましたが、そのどちらも、ドルメンを置き切ってゲームを終了させた人がトップ、最も置けなかった人が最下位でした。まあ、万事がこの調子ってことでもないでしょうけどね。遊び慣れれば、もっと他人の獲得点数の低下を考慮した動きができるようになるんじゃないかと。っていうか、そうなると信じたいところ。
あと、付け加えておくとすれば、ゲーム最初のドルイド配置はやっぱり重要ですね。って、言わずもがなですかこれ。まあ、誰もが無駄なく伸びていきたいわけですしねえ。邪魔されたくない、でも他人と多少は絡みたい、というとても贅沢な願望のぶつけあい。伸びていく足跡(ちょっと違う)といい、初回の配置に賭ける思い入れといい、名作「砂漠を越えて」を思い出します。
ま、思い出すだけですが。



とまあ、カクカクシカジカで手軽に多数派云々がオモシロな本作ですが、最大のネックは冒頭でも述べた地味さ。
ボードデザインがとにかく地味なので、傍から見ててもとてもオモシロそうには見えません。
もうちょっとどうにかできたと思うんですけどねえ。
とくに広場の石置き場を結ぶライン周辺。草が茂ってる感を表現したいのかもしれませんが、中途半端なのでラインから毛が生えているくらいにしか見えません。なんじゃこりゃーって感じのショボさ。こんなのならむしろ描かないほうがマシではないかと。
他にもツッコミどころ満載ですが、まあ遊んだときの楽しみの一つとして。ある意味突き抜けたダサさといえなくもないですが。



日本導入が楽しみですなあ(深遠。