たまにするならこんなゲーム-2

以前遊んだとき際、その圧倒的なオモシロに感激。
非常にイカスゲームですよ、これは。
"「命中(Volltreffer)」"

Berliner Spielkarten発、G.Burkhardt作の変り種トリックテイク。最初に15点の持ち点を与えられた後、以下の3フェイズ(=1ラウンド)を誰かが勝利条件を満たすまで繰り返します。
1、場に公開されていくカードを手番に点数を消費して買い物する。切り札や純粋に数字のランクが高いものほど値段が高く、そうでないものほど安い。場に数枚公開されているので、それを1枚買っては1枚補充。その都度、価値ごとに並び替えを実施。それで自分の手札を構成するまでが第1フェイズ。
2、次のフェイズは手札公開。同じランクのカードを複数集めたり、スートを集めたり、手札がプレイヤーの中で最弱だったりすると「役」になります。それを他のプレイヤーに公開して確認させることにより、点数獲得。
3、最終フェイズは、いよいよト本題のトリックテイク。切り札ありの一般的なマストフォローで進行。で、1トリック獲るごとにカードの内容問わず、即座に点数が加算されていきます。
この一連の流れを繰り返して、ラウンド終了時に点数表示ボードのゴールゾーンに駒を進めていれば、勝ち。というルール。
このゴールゾーンというのが曲者で、通過してしまうと(得点し過ぎてしまうと)ゲームは続行されます。こうなると、第1フェイズにやたらに高い買い物をして、逆に点数を減らして調整をかける必要がでてきます。また、複数のプレイヤーが同時に辿りついた場合、ゾーンの中心(66点)にもっとも近づいているプレイヤーが勝利します。
この「中心」を狙うというシステムが実に興味深いです。
序盤はいち早くゴールゾーンを目指して突き進むという「得点する」展開、中盤には得点状況により各々の方針によりプレイスタイルが分岐、終盤に至るとシビアに中心を狙って収束していく「得点を絞る」展開へと順次移行します。点数を取りたい、取りたくないの兼ね合いや、そんな意図を妨害しあう駆け引き。しかも手札は最初に公開で「組んで」ますから、邪魔をするなと言うほうが無理です。
トリックテイクというとどうしても規定ラウンドを消化してどうこうするようなシステムが多いですが、このゲームは「ボードを進むor戻る」「特定のポイント」を狙うというこれらの要素のおかげで、進行に起承転結が生まれ、起伏があるのでダラダラした感じになりにくいところが素晴らしいと思います。トリックテイクでボード上をレースする名作「キャニオン」と比較すると数字だけのボードなので華はないですが、箱のサイズを考えれば仕方の無い話。むしろコンパクトなサイズとゲームの収束感を思えば、「命中」に軍配をあげたいところ。
公開で手札を組んで、役を晒して、トリックを争って、と聞けば面倒&複雑と敬遠されそうですが、意外に簡単で手軽なのも良い点。プレイするラウンド数の規定は、こういったシステムのため存在しないものの、比較的短時間で決着するので遊びやすいです。手札を公開で構成するというゲームでは「バススティッヒ」があまりに有名過ぎて脚光を浴びることもなさそうなこの「命中」ですが、ただの変り種では片付けられない、かなりの実力を持つゲームだと思います。