箱舟に積み込まれるドリスマテウス

”「アーク(Arche Opti Mix)」”

箱舟伝説を題材にしたカドゲ。大洪水に見舞われる前に、地上の生き物たちを出来る限り箱舟に乗せて避難云々ってヤツですよ。そんな救いに満ちたゲームを作ったのはドリス&フランク。完全新作です。なんだか久々ですねえ。


肉食動物、草食動物、穀物&植物、大きくわけてこの三種の食物連鎖なカードたちをバランスよく(何かと差し支えないように)箱舟に積み込んでいくことが目的。
「とにかく制限が多い」という話をチラホラ聞いていましたが、「ほ、本当に多いなこれ」というのが第一印象。
まあ、その制限の中で試行錯誤していくというのが本作の醍醐味であると思うので、頭ごなしにそれをダメだというわけではないですが、初見で臨むにあたって「楽しめる」までの障壁になることは間違いないとは思います。そのくらいのレベル。
折角なので、そんな制限も含めてグダグダとゲーム内容に触れていきましょうかね。


で。


箱舟は右舷と左舷に分かれてまして。それぞれに部屋があります。でも最初は舳先にほんの幾つかの部屋しかない、小さな小さな箱舟なんですね。
イメージとしてはアジの開きみたいな形状。頭から始まってほんの少しだけ身があって。背筋を中心に、身は右左に分かれてます。そこが部屋。
それが増築を繰り返すことで、どんどん食べるところが増えて尻尾の方まで伸びていくと。巨大なアジの開きが姿を現すというか成長するというか。そしてそんな巨大アジの開きに乗って、大洪水の中を漕ぎ出すわけですよ。って、もうこんなのは要りませんか。そうですか。
部屋を増築するくらいなら、最初から大きめに造っておけよ!と文句の一つも言いたいところですが、きっと予想以上に載せるものが多かったんでしょうなあ。生き物の未来がかかってるというのに、案外計画性ないです。
まあ、そんな箱舟にプレイヤーは一頭、また一頭(?)と動植物を載せていくわけですよ。


そんな積み込み、最初の制限は重量。船に何かを積み込むたび、箱舟は右に左にと傾きます。なにせ倒れるとゲンナリしますから気をつけて積まないといけません。次に、前述の食物連鎖。連鎖するようには載せちゃダメです。食べられたら台ナシですからね。でもサイズの大小によっては食べられないケースもあります。さらに部屋の温度での制限。冷暖によって載せれたり載せれなかったり。温度管理まで要求してくるとは贅沢なヤツらです。さらには「臆病者」と呼ばれる動物たちの存在。肉食動物が傍の部屋にいるだけで怯えてしまって部屋に入ろうとしません。
あとは何がありましたっけね。とにかく、そんな制限を掻い潜るようにして部屋にガンガン積み込むわけですよ。ええ。
全員が初見だと、本当にウッカリと制限を見逃してしまうくらいに兼ね合いが複雑なので、一人は経験者を交えて遊んだほうが良いかもですね。って、いきなりハードル高いですが。
それだけやっても、ある程度慣れるまでは置くたびに「そこダメ」「それは食べられる」「船が転覆する」だのと指摘が入ってしまうので、結構ビクビクしながら遊ぶ感じ。「これいいかな?大丈夫かな?」とか他人の顔色を窺ってしまうような。ま、それはそれでオモシロいんですけどね。



こうした困難を乗り越えて、やっとゲーム本来の攻防部分に突入するわけですが、さすがにもう説明が面倒になってきたので簡単に。いや、そこは簡略化するなって感じですが、まあそういうもんですよ。
で。
この攻防部分を担うルールこそがわりかしオモシロだったりするので、ここまで読んで「アークってちょっとアレかなあヤバイかなあ」とか思った人は安心してください。これらがあるおかげで私は本作を地雷呼ばわりしなくて済んでます。
性質別に「5種」に分けられた動植物の「積み込み貢献度」、それを基準とした得点計算、不確定要素としての「ペット」の存在、積み込み対象によって異なるプレイ可能枚数の違い、プレイかドロー二者択一のジレンマ、8種の特殊効果ありの動物たち、場の硬直を打破する増築ルール、頼りすぎると最終で差がつくディスク巡回ルールなどなど、ざっと思いつく限りでもこれだけのオモシロ要素があります。
これがね、なんだかイイんですよ。「ゲームらしい」っていうか、「それっぽい」というか。ルールは少なくないですが、特に腑に落ちないようなものはなく、上手く色々と組み込んだねえって感じ。
まあ、コレがさきほどの「制限」と絡むので、結果としてはもう「てんやわんや」なわけですが、そんな大変さ辛さをM的楽しさへ転化できたころからが本領発揮というかオモシロな風情。
っていうか、そうやって楽しもうとする強い意志や意欲=真のゲーマーなのではないかと。いやもう何の話だという感じですが。



とまあ、そんな中上級者向けの本作ですが、なんだかんだ言っても絵師ドリスマテウスが描く愛嬌あるイラストはとても魅力的です。登場する全ての動物を描きわけるこだわりようですからね。これだけでも買う価値ありですよ。
ゲーム自体も一種のパズルだと思えばこの制限の多さも納得できるものではないかと思えたり思えなかったり。変に長考さえしなければ4人40分くらいで終わるというのもそれほど評価が落ちない理由の一つとして。
・・・・なんだか前向きな私がここにいます。




全然関係ないですけど、いつも思うのが「ドリスマテウス!」って強そうだなあってこと。ちょっとしたプログレ系メタルバンドみたいですよねえ。超絶早弾きのギタリストがメンバーにいてもいいです。
で、「ドリス&フランク!」って連名になると、昔のコンビレスラー風というか。赤青でレスラーパンツを履き分けて「ウィーー!!」とか叫びながら登場して欲しいような。もちろん試合はストロングスタイル。
とかなんとか。
妄想。