アンコールワット(Angkor)

”「アンコールワット(Angkor)」”

シュミットの新作。全てを呑み込みながら迫り来る原生林に負けじと、自分の寺院やらなんやらを気合で拡張していく箱庭育てモノ。激烈軽くてかなりイケてます。

まず大前提として。

最大4人までプレイ可ですが、個人的には「2人専用」とわりきって遊びたい感じ。そうすることで、本作の持ち味であるところの軽快なテンポがさらに加速して、もはや痛快の域に達する勢い。15分もあれば充分に1プレイが終わってしまう気軽さがまたイカス。それでいてゲーム的な機微も楽しめたりしてスバラシイ。単純なシステム、明快な得点方法にこだわったであろう作者の心意気に涙ですよ。よくやった。
ちなみに多人数プレイの場合は若干評価落ちます。「まあオモシロ、ときにションボリ」くらい。理由は後述。


さて。


見ての通りのタイル配置系ゲーです。各自にマイボードマイスクリーンあり。この時点で既に熱いんですけどね。思わず「おー」って声が漏れます。自分の城。ステキ。
ゲーム中の手順としては、スクリーンで隠し持ってるタイルを、自分のところに置いて「育てる」か、他人のところに置いて「邪魔する」か。あと、特殊点を生み出す3種の駒ってな要素もあるんですけどね。面倒なんで略。
まあ、基本的には叩きあい潰しあいゲー。あげく2人で遊ぶとなると、そりゃもう壮絶。
「え、叩きあいって、性に合わないんですけど」とか思う人もいるかもしれませんが、安心してください、私も叩きあいは苦手なクチです。そんな私が大丈夫っていうんだから大丈夫。
実はこのゲーム、人数によって使用タイル量を調整するんですよ。・・・・ほら、大丈夫そうでしょう?
が、しかし。
攻撃に用いる原生林タイルは一切増減させないんですよね、これが。調整するのは主に防御時に有効な水タイルのみ。しかも人数が減ったぶんだけそのタイルを減らすという方向性。
だもんで、二人で遊ぶと明らかに邪魔タイルが手元にくる割合が多くなります。自然と攻撃する機会も実質的な手番回数も増えるってことです。
ま、こうしたルール面から察するに、「ノーガードで殴りあえ」という暗黒メッセージ。もうね、作者が推奨してますから従うほかないわけですよ。
すると展開がとても攻撃的な感じになりまして。もうね、次から次へと建物が潰れていくんですよね。でも再建も簡単にできるもんだから、「建てたら潰れる、潰れたら建てる・・・」x5みたいな勢い。っていうか、これだけガンガンタイルが刷新されていくと、邪魔することの悪意が肯定されていくというか、良心の呵責が希薄になっていくというか。積み重なるタイルを見てて楽しくなる感じに。
第一、ゲーム自体すぐ終わるので、歯をギリギリさせて打ちのめされたり悔しがっている暇すらないわけです。例えていえば、「砂の城を作りながら、水鉄砲で撃ち崩しあう」ようなゲーム感。・・・・よくわからんですかね。
しかも邪魔しすぎると、それを利用して得点源へと転じる「やりすぎ注意!静かなる虎が今・・・」(勝手に命名)というルールが発動しますからね。邪魔されても安心。えー、これまたさっきの砂の城の話で言うと、「砂が湿って逆に造りやすくなってしまう」ような感じ。こんな例えはよくわかりませんか。そうですか。
そういうことなんで、「あんまり痛くないから気楽に叩きあえばいい」ってことですよ。これだけ気楽だとむしろ爽快ですから。いやほんと。


最後。多人数プレイは評価落ちる話。
なぜかというと。以下理由。4つ。
盤上見渡せば各自の得点状況を計算しきれるゲームなんですよね、これ。だから「時間をかけて」計算すれば、現状のトップが明確にわかります。はい、まず1ションボリ。
もちろん現状でのトップを叩かないと「えー、なんで俺が」とかブーたれる人だっていますから、何かにつけて「叩くことに慎重になってしまいがち」。すると途端に「気楽さが減る」。はい、これで2ションボリ。
また、「出過ぎた杭は打たれる」という道理から、目立ってしまった一人が集中攻撃を受けたりします。いくら再建できるといっても、「なんだよ私ばっかり」ってな気分になりかねません。そらきた3ションボリ。
さらに、さきほどまで説明していたゲームバランスですが、あくまで2人用の話です。人数が増えれば防御タイルは増えますが、得点源の建物タイルや攻撃タイルは増えません。結果的に叩きあいやら刷新が少なくなり、全体的に地味な感じの展開になってしまうのです。これがとどめの4ションボリ。4Sですよ、4S(謎。
だもんで、2人がとてもイイという最終結論。そういう風に出来てますから。と、決めうち。
疾風怒濤の気軽な叩きあい、それがまさに本作。二人専用と限って言えば、かなりオモシロです。オススメ。