フェドゥッテさんとディナー。その顛末。

20時。フェドゥッテさんと合流するべく、約束していた店に向かいます。実は日本を発つ前にメールでディナーの約束を交わしていたのでした。
店員に案内されて奥へ進むと、気難しい顔でフェドゥッテさんが座っています。ああ、フェドゥッテさん、ボンソワー。と挨拶。しかし彼は微動だにせず、静かに挨拶だけが返ってきます。
うわ、やべ、今日機嫌悪いのかも、と思うも後には引けず。ここはモノで釣るしか!と、とりあえず持参した日本メーカーのボドゲ(最近作ながら微妙だった系)をプレゼントすることに。すると一転、満面の笑みを浮かべて周囲の他人にボドゲ見せびらかしはじめました。よほど嬉しかったんでしょうね。さすがマニアのフェドゥッテさん。でも周りは完全にドン引きですよ。
そして食事開始。早速、「ボドゲの和名は統一性がなくてアレだねえ」という、とても局地的な話から切り出してきた懐の広いボドゲマニアのフェドゥッテさん。この人は真性だ!と知り、私は安心しました。そこからは酷くマニアな話が続きます。料理も上手いし、話も楽しいしで、ワイワイと一緒になってワインをたらふく飲みました。


と、ここまでは良かったのですが・・・・。


私は知らなかったのですが、フェドゥッテさんはとても酒癖が悪かったんですね。アルコールが回り始めると、「ダイアモンドにはボードが必要なんだよ!」とか「俺はくにちーを越えた!」などと、ギャーギャーわめき散らしだしたのです。
あわわ、そんなことを言ってたらボドゲ界から干されますよ、壁に耳あり障子にメアリーですよ、となだめてみたのですが、「かまうもんか、どうせコンビ作しか発売できないんだから!」と、今にも暴れだしそうな勢い。
困った私は、ほどよい時間だったこともあり、お暇することを告げたのですが、「今からエッフェル塔に行くぞ! だって俺のヒゲは自毛じゃないんだ!」と言い出してききません。このまま彼を一人にするのも不安だったので、仕方なくお供することにしました。
が、道中、飾り窓の女性にハレンチな言葉を投げかけるやら、道端で唐突に「ボドゲバンザーイ! 俺バンザーイ!」と叫ぶだすなど、もうやりたい放題。挙句の果てには、なぜか持参していたあやつり人形のコイン(もちろんドイツ版)を握り締めて、「盗めるものなら盗んでみろ!」と何度となく私に向かって拳を突き出してくるのです。
・・・・今になって考えてみれば、拳を突き出してきたということは、もしかするとフィストオブドラゴンストーンのものだったのかもしれません。なにぶん暗がりでしたので。


エッフェル塔に着くや否や、なぜか持参していた修正液と赤マジックでエッフェル塔を塗り始める始末。怒られるからやめた方がいいですよ、新作出せなくなりますよ、とわりあい必死に止めたのですが、酒で勢いづいたフェドゥッテさんは「いいんだよ、特殊カード増やすから!」と、もう支離滅裂。あげく「新カードをユーザーに募集すればいいんだろ、結局!」とわけのわからないことを口走っています。
大量の修正液とマジックを消耗して塔の脚一本を塗り終わろうとするには深夜2時。それでも手を止めようとしないフェドゥッテさん。さすがに疲れたのでそろそろ帰りますね私、と恐る恐る聞いてみたのですが、「だめだ! 君は新時代の証人になるんだ!」との言葉を私に叩きつけ、ギラリとした目で睨みつけてくるのです。
そして明け方、フェドゥッテさんの塗り作業も塔の脚二本目。作業が佳境に入り注意が逸れたのをいいことに、私はフェドゥッテさんの目を盗んでコッソリと逃げだしてきたのでした。振り返った時に見た、あの鬼のような形相と「これはいいジレンマになるぞ・・・・」というつぶやきは今でも忘れられません。


帰国後、彼宛に勝手に帰ったことを詫びるメールを送りましたが未だ返事もなく。やはり怒っているのでしょうか? それとも彼は今も・・・・。
そんな感じ。



お詫び:あまりの楽しさ(前半)、あまりの恐怖(後半)のため、写真を取り忘れました。
注意:文中のフェドゥッテさんは、ゲームデザイナーで有名なフェドゥッティさんとは何の関係もありません。