ヴァーティゴ(Vertigo)

”ヴァーティゴ(Vertigo)”

各国が利潤を求めて工業を発展させると連帯責任的に地球がどんどん荒廃していくという、「僕たち地球人!」の合言葉を思い出さずにいられないビジネス系のボドゲ。かなりオモシロ。ちょっと油断するとたちまち人が住めない荒野がここそこに広がっていくんですよ。コォォォォォォとかいって砂嵐が吹き荒れてるイメージ。ケンシロウとかが彼方から歩いてきそうな予感さえも。
わりと昔のゲームなので、システムはシンプルめ。手順も単純で、全員でいくつかのフェイズを「君はどうする?私はこうする」みたいな流れでサクサク解決して進みます。
最初は「これくらいは問題なさそう、大丈夫だろ」と全員利潤を求めて開発を推進するんですが、ほんとすぐに「案外地球って脆弱なんだ」ってことに気付かされます。しかも荒廃しだすと加速がつくというか。これがとにかく速い。
だもんで、中盤くらいから一致団結して地球清浄化に努めてみたり。とかやってると誰かが抜け駆けしてまた荒廃、みたいな。「おいおいおまえはもうあの日のことを忘れてしまったのか! ノーモア!」なんて痛切な叫び。とかいいつつ、じゃあ私も僕もと一人また一人と地球滅亡の危機から目を逸らして再開発しはじめちゃったりして。「人間はバカだ、気付いたのにまだやってる」なんて、しみじみ。こりゃあなんて真をついたゲームなのかと。
連帯責任バッドエンドなゲームとしては近作なら「テラ」とかを思い出しますが、あれよりももうちょっとシステムもテーマ表現もシビア。各国のやり口が如実に地球環境に反映されるので、心苦しさ度が高いです。みるみる国民とか死ぬし。でもね、オモシロですよ。かなり。シチュエーションがイケてます。世界滅亡と自国の発展勝利が天秤の上ですからね。しかも、全く重みが違うのになぜかジレンマとして成立してしまっているという不可思議ぶり。スゲー。
ただ1点、問題を挙げられておくとすれば。どちらかといえば教育的な側面を持っているというか、このゲームでの出来事を反面教師とせよみたいな思想が根底にあるので、ゲームバランスは全体的に破滅よりなチューン。だもんで、突き詰めてキツキツに遊ぶと、ゲームを無事に終了できる臨界点のあたりで「地球をダシにした妙な脅し」をかけたりすることが出来るんですよ。「破滅するけどいいのか?」みたいな。そうなると途端にオモシロくなくなる気がするわけですよ。
ということで。このゲームを遊ぶにあたっては、なにかとウッカリしながら「荒廃→清浄化→また荒廃」という愚かしい天秤な状態に翻弄されたいところ。あまり真剣に損得勘定して「勝つ意識」が全体に強くなってしまうと、おおらかに成立している本作の魅力が最大限に発揮されなくてゲンナリ
そんななので、ビジネスゲーを「ビジネスゲー風」に楽しんで遊べる人にオススメしたい次第。これ最重要。