スキャン(Scan)

”「スキャン(Scan)」”

派手さはないものの渋くオモシロゲーな典型。かなり好きです。イケてます。
ということで、ちょっと詳しめにルール説明。ともすれば再現できそうなのでアレですが、まあわりと古いゲームなので「時効」ってことで。



トリックテイクなカドゲ。カード構成はぶっちゃけて言うとトランプ。しかし赤黒ではなくて、赤黒青緑の4色。しかもカード背面は対応するスート色に塗りわけられているので、他人から見ると手札のスート構成は丸わかりです。無論、ランクはわかりませんが。
基本的には対面コンビで2vs2のチーム戦推奨。個人戦も可能ですが、醍醐味っていうか持ち味が失われますね。3チーム6人も可能ですが、鋭さは失われそうです。・・・・注文多すぎますかね。
各スートごとにカード一枚について得失点(黒なら+10、青なら-5とか)が決められていて、ラウンド終了時にチームごとに集計して総得点を比べあう、ってな感じ。カードの得点分布は均一なので、片方がプラスなら片方は必ずマイナスになります。で、ラウンド繰り返して勝利ラインを満たすまでやると。


手札はよくあるトリックテイクのように「配りきり」ではないです。規定枚数制で6枚。残りは山札。トリックを解決するごとに1枚ずつカードを補充して、山札切れしたら手元に残っている手札を使い切るまでやってラウンド終了。まあ、結果的にはカードを使い切るんですが、ゲームに段階があるってことです。
段階としては大きく2段階。「山札あり」と「山札切れ」の状態と。ラウンド初手のトリックだけちょっと例外的処理。切り札なしでマストフォロー。スターターになったチームは、ここで少しですが確実な得点を稼げます。
この初手以降は切り札が登場。カード補充したあとに出てきた「山札一番上のカード背の色」が次のトリックのみ通用する切り札色になります。だもんで、補充するごとに(トリックごとに)切り札も変わります。
で。切り札がある第一段階ではフォローのルールがちょっと変則的。
基本はリード色に対してのマストフォローなんですが、リードをフォローせずに切り札をいきなり切り出すこともできます。さらに。リードをフォローできない時、切り札を持っている場合は、必ず出さなくてはいけません。リード色も切り札色も無い時だけ、その他のカードを出すことができるのです。「二重マストフォロー」みたいな感じ。
慣れないと感覚的にはちょっとわかりにくい縛りなんですけども、これがすごくイイ。カード裏で他人の手札スートが全てわかってしまう本作だからこその悩ましさがスバラシイわけですよ。そこにチーム戦ならではの妙味まで加わって、もうたまらなくオモシロ。「迂闊なリードは身を滅ぼす」って感じです。ミラクル。


で、そんな切り札ありの状況が続いて山札切れしたら、第二段階突入。手元に残った手札(都度に補充しているので初期状態と同じ枚数)を使い切るまで、切り札なしで普通のマストフォロー進行します。
前の段階とはうってかわって「リード色が完全に最強」なので、参加者の手札状況によってごっそりマイナスを喰らわされたり、根こそぎプラスを掻き集めたりもできます。もちろん、ここでも他人のスート色はわかるので、チャンスはチャンスとわかりますし、逆境は逆境とわかるのがオモシロ。わかっていながらそれに臨むという重圧。「みすみすチャンスを潰す」のも「逆境を覆す」のも、全てプレイヤー次第ですからして。この第二段階突入を見越して、手札をうまく調整して残せれば強いんですが、なんとも難しいのですよ。
ってな感じでラウンドが終了。結局、初手の例外トリックで1、1段階で6、2段階で6、合計13トリックを行うわけです。トランプですからね。



とまあ、聞くからに地味なゲームなんですが。
でもこれがイイ。とてもイイんですなあ。



ラウンド全体の流れと、段階ごとの立ち回り方と。
手札は「少しずつ補充しながら」なので、徐々にしか中身がわからないというのが不安でオモシロ。なのに他人のスートだけはわかるものだから、それがまた「これは大丈夫かな?」を増長させています。
この曖昧さが救いとなって、完全キツキツゲーにならずに済んでいる感じ。「スート色」という情報が増えた分を、「まだ手札には来ていないカードがあるかも」という不確かさでもって相殺していて、上手く「帳尻があった」みたいな。ゆらぐので、存外遊びやすいです。
配り切りのトリックテイクにはない、こうした「未来の不確かさ」を利用した変則性がシステムの中できちんと機能していることに感銘。単にカードを余らせて遊ぶゲームなら他にもありますが、本作は最終的には全てのカードを使いきるので、不確かながらも必ず訪れる未来があるんですな。それがイカス。「カード1組使いきり」なので、他の一般的なトリックテイクと同様にカウンティングは有効ですし。なんだ複雑に見えて、実は全てが基本からの延長なんじゃないか、みたいなオドロキもあります。
スートがわかるというコンポーネントの仕込みと、ルール的な仕込みが調和して見事なオモシロを生んでいます。トリックテイクというジャンル全体からみれば、どちらかといえば「正統派」ではなく「イロモノ」に属するのかもしれませんが、これはとにかくスバラシイです。見た目のショボさが唯一のネックですが、「機能的と言えなくもない」なんて贔屓目になってしまうくらいにオモシロ。これで初版発売が1988らしいですから、えらいこっちゃですなあ。スゲー。ミラクル。