乗車券(Ticket to Ride)

”「乗車券(Ticket to Ride)」”

遊んだのは、受賞マークもなく、ミステリートレインもない、素の乗車券アメリカ。噂によるとシリーズ作となり、乗車券5まで出す構想があるそうです。ちなみに2作目となる乗車券ヨーロッパが先日発売されたところ。日本でも既にいくつかのゲーム系サイトで紹介されています。いまいち時流に乗れない私。それはともかく。
大賞受賞しちゃったこともあり、世の中にはいくつかのファンサイトで自作マップを公開しているところもあります。ドイツ、ベルギー、イギリス、スイス、ハンブルグ、ヨーロッパ、などなど。全て基本となる乗車券アメリカのシステムを踏襲していますが、今回本家版元にてヨーロッパが発売されてシステム面でも新要素が生まれたことですし、ファンサイトでもまた新たな動きがあることでしょうねえ。ちなみに私も、いまさらながらベルギーとイギリスを自作しました。ま、単にパウチな機械と裁断機を使いたかっただけともいいますが。
そんな余談はもういいですね。


先日、民間の方と遊んだ際、このゲームのステキさ加減が非常に良くわかったので、報告がてらの所感ということで。


ルールが整然としていて、しかも良い意味で大雑把。結果、わかりやすいので導入も容易。手軽なジレンマ、待ちと攻めのメリハリに唸る、程よい手応え。長期的な目的と短期的目標を見失いにくいので、「どうしたらいいかよくわからない」という漫然とした打ち筋になりにくいのです。


もうちょっと細かい話。
「路線を引くのは早いもの勝ち」ということと、「長い路線を引けば得点が高い」ということの周知さえ徹底しておけば、自然とゲームの勘所に至るように思います。目的地は手元のカードで明らか、常に確認できますから、あとはそれをどういう経路でつないで行くかの話。相手が行きたいところは良く分からない。でも「とにかく自分はつなぎたい」というとてもシンプルな思考で、なんとかなる。見れば経路の選択肢はそう多くない。早く引かないと、遠回りさせられる。こうなると、早く路線を引きたいとばかりにジリジリしますよねえ。
すると、早く目的のカードを集めないと、という話になる。場になければ山引きもするし、時には場のワイルドカードを1枚だけとわかっていても引いたりします。「集める」ことについて、もしくは、早く路線を引く事について、いかに効率を高めるか、を否応なく意識してしまう。で、もちろん、その意識や選択の中でジレンマを楽しめてしまう。
なかなか目的の色を引いてこれなければ、誰かが貯めているのでは、と勘ぐることもします。そういえば、「同じ色のカードには限りがある」と言っていた、誰かが使わなければ出てくるはずもない。相手の手元を見れば、中身はわかりませんが、大量の手札がありますからね。そりゃ、自然にその思考に至りますよ。そういう風に出来ている。
山札尽きてリシャッフルされるのが、とてつもなく待ち遠しかったりする。だもんで、どの札がどのくらい使われたかってのも、アタマの片隅に残っていたりする。なにせ、他人が線路を引いているのはとてもうらやましいこと、ですからね。じっと見てしまう。気にしてしまう。
それが自分の引きたい路線だったら、とても悔しい。ゲンナリする。そして、これからどうしようと考える。柔軟に対処しなければならない。新たな経路を模索しなくては。
自分の経路とは関係のない路線だったとしても、ああ、あそこに線路引かれなくて良かった、と胸を撫で下ろす。でもすぐに、次はダメかもしれないとドキドキする。他人の挙動が自分の損得に直結していることを思い知ってしまう。
その他にも、目的地カードでは、可能性の開拓を知りますし、時には既に完成した自分の路線を踏まえてギャンブルする感覚みたいなのも味わえてしまう。盤面に広がるあの色の路線は誰か、っていうのも相手の手元見れば山のように列車駒があって明らかですし、それを見るたびにゲームの終了が近づいていることを意識してしまう。急がないと、と焦る。どこまで頑張れるか、と粘る。


こうしてダラダラと考えていくと、とてもゲーマー的な思考を要求するゲームだということがわかります。しかし、それぞれが上手く関連づいているので、プレイヤーは自然とそういった思考に至ります。そう導かれる感じ。その道筋がとても明快でスムーズだから、遊んでいてあまり負担にならない。だもんで、アタリがやわらかいし、それでいて民間の方にもゲーマーな楽しみが堪能できてしまうという良さがあります。
考えるほどに、とてもいいゲームです。広がりを感じます。ムーンらしい、いつかどこかで見た、よくある感じのゲームですが、今回のような機会を持つと、その「真意」や「作りの上手さ」を痛感しますね。今回プレイ時も、遊び進むに連れて、民間の方とは思えない、まるでゲーマーのような発言が飛び交っていた状況がそれを物語っています。
私個人としてのこのゲームのオモシロ具合は「ホドホド」なのですが、こうした状況下に限って言えばとてもオモシロです。ボドゲの楽しさを満喫してもらえるというのはとてもスバラシイ。ボドゲを遊んでみて、不完全燃焼のままよくわからず終了というのが一番いただけない状況ですが、このゲームならそういうことも少ないでしょうし、安心してお勧めできます。駒もたくさん、ボードにドンドン配置できたりもして、とてもボドゲらしいオモシロに溢れてます。
これが大賞とって良かったですよ。いまさらながら、その選択に納得。これで確実にボドゲ人口増えましたね。そういう意味でも、とても偉大なゲーム。
とはいえ、いきなり「乗車券を遊ぶ」ってのは厳しいかも、ですけどね。無論、段階を踏みつつ。


でも、シリーズ5作構想ってのはどうかと思う次第。商魂豊か過ぎ。カタンアルハンブラカルカソンヌみたく、追加マップ、追加ルール、追加駒で十分。あんな大きな箱、5つも棚に並べる気にはなれないんですが。さすがに。
個人的には、5作が出揃って一段落したあとに、シリーズ全作品を一緒くたに取りまとめたコンプリートBOXみたいなのが出ることを期待しているんですが。無駄なコンポーネントを省いて3個分くらいの値段で巨大な一箱にまとまったりする感じの。無理ですかね、そんなのは。
っていうか、企画ポシャったりして、予定の5作全部は発売されませんかね。どうなんでしょうか。